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久保田裕の著作権コラム

2024/09/10委員長コラム Vol.44

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来年は日本の著作権法にとって節目の年だ。
2025年で、「プログラムの著作物」が著作権法に明記されてから40年。それ以前もアーケードゲームは著作物である、との裁判例はあり、 コンピュータソフトウェアは著作権法で保護されうるものであったが、プログラムが9つ目の著作物として例示された意味は大きかった。

著作権法が改正された1985年当時、コンピュータソフトウェアの保護に関する日本国民の意識は大変低いものであった。 デジタル形式で提供されるゲームソフトやビジネスソフトは、他の著作物と異なり完全なコピーができてしまうという性質から、著作権者であるソフトウェアメーカーは大いに困っていたのだ。

当時、私は、ソフトウェア法的保護監視機構を経て現在の著作権啓発団体(ACCS)において、ソフトウェアメーカーと共に著作権保護活動に取り組み始めた。 情報化社会の秩序維持の観点から全国の警察を回り刑事対応を要請した。最初はコンピュータプログラムが媒体にどのように収納されているのかといったことから説明しなければならなかった。 各警察学校での講演、捜査手法や手続きを記した読本の作成などの結果、全ての都道府県警察でソフトウェアの著作権侵害事件を対応してもらえるようになった。

刑事責任の追及と同時に、日本人に広く著作権について知ってもらうこと、つまり著作権教育にも取り組み始めた。情報やソフトウェアが経済文化の牽引力となる社会への変換のため、 日本が著作権を尊重する国にならねばならない。時間はかかるものの、著作権の知識、遵法意識を高めることこそが必要と考えたのだ。 学校や企業団体を回って講習会の開催、著作権をやさしく学べるテキスト制作、新聞・雑誌への寄稿やテレビへの出演など積極的にメディアにも露出した。 その活動の土台の一つとして、私はビジネス著作権検定を応援している。
そして現代。
日本人のほとんどは、著作権は守るべきであると考えるようになったと感じている。その上で、生活や仕事に直結した部分について、 正しい著作権知識を身につけて、情報社会を豊かに安全、安心に暮らして欲しいと考えている。

いま、AIをめぐる問題が様々議論を呼んでいる。AIの問題には雇用問題や機密情報の漏洩、偽情報による社会の混乱や国家の安全保障など、実はさまざまな分野の問題があるのだが、 「創作・創造」という人間しかできない営みに直結する著作権についての問題も大きい。

著作権のトラブルは最終的には個別の事案ごとに裁判で決まるもので、AIに関しては海外では訴訟が起こされているが、日本では事例が乏しい。 しかしAIの利用が急速に進んでおり判例の蓄積を待っていては遅いという危機意識から、文化庁は審議会で論点を整理し議論を進め、 2024年の3月、「AIと著作権に関する考え方について」を公表している。本資料をぜひ一読して欲しいのだが、本資料を理解するためには、 言い換えれば著作権に関する最新の議論を理解するためには、著作権についての基礎知識が不可欠であるのだ。 SNSでのAIと著作権に関する議論は、不正確な知識に基づくものも多い。皆様にはぜひ正確な著作権知識を身に付け、適切な資料をもとに考えて欲しいと思う。
執筆者プロフィール
サーティファイ著作権検定委員会 委員長 久保田 裕
一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会 専務理事
山口大学特命教授
公益社団法人著作権情報センター 理事
特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会 理事
特定非営利活動法人 ブロードバンドスクール協会 情報モラル担当理事
電子パンフレット
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