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著作権の読み物

2024/08/25クリエイターにとって著作権を侵害「するリスク」も「されるリスク」も身近なもの~クリエイターが知っておくべき著作権に関する法律とは

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せっかく作品を作ったのに「パクリだ」と言われる、依頼主から不合理なことを言われる......クリエイターにとって、このような著作権絡みのトラブルは尽きません。誰かの権利を侵害しないためにも、また自分の作品を守るためにも、「著作権」の正確な理解は重要です。
しかし、「そもそも著作権とはどういう権利なのだろうか。何を守ってくれるのだろうか」と疑問に思うこともあるでしょう。
本記事では、クリエイターが知っておくべき著作権に関する疑問にお答えするとともに、契約締結の重要性について詳しく解説します。

当サイトを運営するサーティファイでは、ビジネス著作権検定を開催しており、企業の経営者・法務・総務のご担当者様や、フリーランスのクリエイターの皆様が「意図しない著作権侵害を起こさないためのリテラシーを身につける」ためにご利用いただいています。
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クリエイターを守る権利、著作権とは

創作活動と聞いて、真っ先に思い浮かべる権利は著作権ではないでしょうか。
まずは著作権の基本を解説します。

著作権は何のためにあるの?

絵を描く、小説を書く、映画を撮るといった行為は、知恵を絞り、労力を使い、ときにお金も使って形にしていきます。
それにもかかわらず、できあがった作品を、第三者がフリーライド(タダ乗り)して使ってしまったら、せっかくの創作活動が無駄になってしまい、やがては誰も創作しなくなってしまうでしょう。
ただ、作品を守りすぎてしまうと、それを批評したり、そこからインスパイアされた新たなアイデアを発表しにくくなったりと、逆に文化の発展を妨げてしまうかもしれません。
創作物を守るのと、それを公正に利用することの調整が必要で、この調整のために「著作権」という権利が考え出され、「著作権法」というルールで規定されることになりました。
ですから、著作権を考える上では、著作物を「守る」という方向と、「適正に利用する」という方向の、2つの側面から考えることが重要になってきます。

著作権が発生するタイミングは?

それでは、著作権はどのように発生するのでしょうか。
たとえば特許や商標のように、工業的なものについては、登録のような手続きがあって初めて発生します。
他方、著作権は著作物ができた瞬間、いうなれば人の考えが形になった瞬間に発生します。
そして、原則として著作者が亡くなってから70年で消滅します(著作権法51条2項)。
出典:総務省e-Gov「著作権法」

著作物とは

それでは、著作権によって保護される「著作物」とは何でしょうか。著作物の定義や種類を確認していきましょう。

著作物の定義とは?

著作物は、著作権法で以下のように定められています。

著作物=「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)。
出典:総務省e-Gov「著作権法」
このうち、中心的な定義は「思想又は感情を創作的に表現したもの」の部分です。芸術性の高さは要求されず、つまり「人の考えや気持ちが内心にとどまらず外部にまで表れていて、そこに個性があるもの」であれば、およそ著作物に当たると考えられます。

著作物の種類

著作権法上、以下のものが著作物の例として挙げられています(著作権法10条1項)。

①小説、脚本、論文、講演そのほかの言語の著作物
②音楽の著作物
③舞踊または無言劇の著作物
④絵画、版画、彫刻そのほかの美術の著作物
⑤建築の著作物
⑥地図または学術的な図面、図表、模型そのほかの図形の著作物
⑦写真の著作物
⑧映画の著作物
⑨プログラムの著作物

創作活動をする上で、さまざまな著作物があることを理解しておきましょう。
出典:総務省e-Gov「著作権法」

その他の特殊な著作物

ここからは、クリエイターが知っておくべき、特殊な著作物について確認しましょう。

二次的著作物

二次的著作物とは、「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創造した著作物」をいいます(著作権法2条1項11号)。 これは、もとからある著作物(原著作物ともいいます)に、創造性を足してできた著作物のことです。
「翻訳」や「編曲」、「映画化」はわかりやすいですね。小説をコミカライズした漫画なども二次的著作物となります。

二次的著作物として適法に成立すれば、二次的著作物の著作者も、著作権を有することになります。そこで、二次的著作物を利用する場合は、原著作物の著作者の許諾のほか、二次的著作物の著作者の許諾も必要になります。
出典:総務省e-Gov「著作権法」

編集著作物

編集著作物とは、「編集物でその素材の選択または配列に創造性を有するもの」(著作権法12条1項)です。
たとえば辞典のように、内容自体はデータなど著作物でなくても、その配列などに創造性があれば、著作物として認められます。クリエイターとの関係では、ホームページなどの作成が問題になることが多いでしょう。
出典:総務省e-Gov「著作権法」

データベースの著作物

データベースも、「その情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するもの」(著作権法12条の2第1項)は、著作物性があります。
クリエイターとの関係では、創造的に構築された顧客データベースなどが問題になり得るため注意が必要です。
出典:総務省e-Gov「著作権法」

共同著作物

複数人で作品を作ることもあるでしょう。「二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」(著作権法2条1項12号)については、共同著作物といって、みんなで権利行使をすることになります(著作権法64条1項、65条1項)。
出典:総務省e-Gov「著作権法」

著作者の権利とは

著作者の権利には、大きく分けて財産権としての著作権と、著作者人格権の2種類があります。

財産権としての著作権とは、簡単にいえば著作物を独占的に使用するための権利です。
たとえば、著作権法上、複製権(著作権法21条)、上演権・演奏権(22条)、公衆送信権・公の伝達権(23条)、翻訳権・翻案権(27条)などが定められています。

・複製権:著作物を印刷・録画などの方法で複製する権利
・上演・演奏権:著作物を公衆に向けて上演したり、演奏したりする権利
・公衆送信権・公の伝達権:著作物をインターネットでの送信などさまざまな方法で公衆に送信する権利
・翻訳権・翻案権:著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化する権利
出典:総務省e-Gov「著作権法」
著作物はその人でしか生み出せなかったものがほとんどですから、著作物は人と結びつきます。そのため、著作者の人格的利益を保護する権利も認められており、これを著作者人格権といいます(著作権法18条以下)。著作権法では、著作者人格権として、公表権、氏名表示権、同一性保持権が定められていることも理解しておきましょう。

・公表権:著作者が著作物を公表するかどうか、公表する場合はどのような方法で公表するかを決める権利
・氏名表示権:著作者が自分の著作物にその氏名を表示するかどうか、表示する場合は本名にするか、ペンネームにするかを決める権利
・同一性保持権:著作者が自分の著作物のタイトルや内容を、ほかの誰かに勝手に変えられない権利

著作者人格権は、その人に帰属するものですので、譲渡できないものとされています(著作権法59条)。
出典:総務省e-Gov「著作権法」

著作権を侵害するとどうなるの?

著作権を侵害すると、民事上、損害賠償義務を負うことになります。漫画の海賊サイトやファスト映画の事例のように、損害額が数億円を超える場合もあるでしょう。そのほか、差止請求、名誉回復措置の請求を受けることも考えられます。

また、刑事上の責任も負う場合があり、著作権侵害は10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、または両方を科される可能性があります(著作権法119条1項)。 過去には、漫画海賊サイトの運営者に実刑判決が出され、大きな話題になりました。
このように、著作権の侵害には多くのペナルティーがあるほか、クリエイターの場合は将来の仕事にも影響することが考えられます。クリエイターは著作権を侵害してしまわないよう、細心の注意を払わなければなりません。

著作権を侵害しないようにするための方法

作品を作ったり納品したりするために、どうしても他の著作物を利用しなければならない場合もあります。

著作権を侵害することなく、著作物を適法に利用する場合に理解しておきたいのが「許諾」と「引用」です。

許諾

著作者から許諾を得ることによって、著作物を利用できるようになります。
著作物によってはすでに許諾がなされている場合もあるので、そういった素材を使うのも一つの手でしょう(いわゆる著作権フリー。他方でフリー素材というのは、「無料で使っていい」というだけで「自由に使っていい」とは限らないことには注意が必要です。サイトの利用規約などをきちんと確認しましょう)。

引用

許諾を取らなくても、適法に引用することで、著作物を利用することができます。

適法な引用というには、明瞭区別性(引用部分と本文が分かれていること)、主従関係(本文が主)を中心に、利用目的やその方法・態様、利用される著作物の種類・性質、著作権者に及ぼす影響の有無・程度などを総合考慮する傾向にあります。また、出所の明示も必要です(著作権法48条1項1号)。
出典:総務省e-Gov「著作権法」

クリエイターが気をつけるべき具体例

以上のように、クリエイターとして他の著作物を利用するには、原則許諾を取るか適法に引用する必要があります。ここからは、よく遭遇する具体的な場面について解説しましょう。

他人の画像やイラストを参考にして作成する

他人の画像やイラストを参考にする際、類似しているとされると著作権侵害になります。 ただ「似ている」というのは程度の差がありますから、どこまでが著作権侵害といえるか、その線引きが重要です。

裁判例上、本質的特徴を直接感得できるか否かがその基準となりますが、「本質的特徴」というのが何を指すのか、いまひとつはっきりとせず、微妙な判断とならざるを得ません。
イメージとしては、その画像やイラストのうち、オリジナリティーがある部分(このイラストはここが珍しい、といえるポイント)が一致していたり似ていたりすると、類似しているとされ、著作権侵害とされることになります。

小説や漫画のコピーを使う

小説、漫画、新聞や雑誌の記事、書籍などのコピーを使いたいのであれば、著作者の許諾が必要です。なお、著作物によっては日本複写権センター(著作物の複製などに関する権利を管理する公益社団法人)が集中管理していますので、当該団体に利用を申し込むことになります。

パロディ作品を作成する

パロディとは、既存する美術や広く知られている文学作品などの特徴的な部分を引用して、別の作品を作り、モデルにした著作物を風刺・批評する行為のことです。パロディやオマージュといった作品は、引用の要件を満たさないことから、基本的に著作権侵害になると考えておくのがよいでしょう。

パロディ作品が溢れているのは「著作者から黙認されているに過ぎない状況」だということです。
著作権について本当にクリアにしたいのであれば、著作者の許諾をもらうほかないといえるでしょう。

クリエイターが知っておくべき著作権契約

ここまでは、クリエイターが作品を作る段階で気をつけるべきことを説明しました。では、作品が完成した後、クライアントに納品する段階で気をつけることは何でしょうか。

契約を締結する必要性

先の述べたように、著作権は創作された瞬間に発生し、著作者人格権は譲渡できません。
つまり、クライアントときちんと契約をしておかないと、以下のようなトラブルが発生する恐れがあります。

1.クリエイターに著作権が残存することになり、クライアントがどう利用できるか不透明になる。
2.著作者人格権を自由に行使できるようになり、クライアントとの権利行使が不透明になる。

著作権でのトラブルを未然に防ぐためには、
1.著作権の帰属
2.著作者人格権の処理

上記のような内容を盛り込んだ著作権契約を結ぶことが肝になります。

①著作権の帰属

著作権に関する契約書をつくる際には、まず、著作権が誰に帰属するかを明確にしておく必要があります。
大きく分けて、次のいずれかになるでしょう。

ⅰクライアントに譲渡するパターン
ⅱクリエイターに残しておくパターン

このうち、ⅰのクライアントに譲渡するパターンでは、著作権法61条2項に注意が必要です。
61条2項は、27条(翻訳権等)と28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)については明記していないと譲渡できないとされています。そのため、実務上「著作権(著作権法27条及び28条に定める権利を含む。)を譲渡する」などと契約書に記載することが一般的です。
このほか、トラブルを防ぐためには、いつ、いくらで著作権が譲渡されるかも明記すべきでしょう。
出典:総務省e-Gov「著作権法」

②著作者人格権の処理

著作者人格権は譲渡できないので、クリエイターのもとに残ることになります。
そこで、「(クリエイターは、クライアント及びクライアントが指定する第三者に対し)著作者人格権を行使しない」と定めることが多いでしょう。

「著作者人格権を行使しない」という契約条項がある場合、クリエイターはクライアントの了解なく、納品した著作物を自由に使うことができません。そのため、自身が制作した著作物の実績をWebサイトなどに公開できず、場合によっては著作物の内容を大きく改変されるリスクもあります。

したがって「著作者人格権を行使しないと書かれた契約書を提示されたとき、拒めるものなのか」「できれば承諾したくない」と考えるクリエイターも多いでしょう。

他方で、クライアント側としては、納品後にもクリエイターから同一性保持権を行使されるなどすると、修正の必要が生じても修正できないことになってしまいます。そこで、多くの事案では、著作者人格権不行使条項を入れるよう求められることになります。

契約は自由ですから、不行使条項を定めることも、定めないことも可能です。
ただ、上記のように双方に希望がありますから、クリエイター側としてはクライアントと良い関係性を保ちながら「著作者人格権不行使関連の不利益を被らない条件での契約」を提案してみることが考えられます。

たとえば「クリエイターの氏名をWeb上では表示する」「著作物の改変の範囲を前もって設定する」など、双方が十分に話し合い、譲歩する範囲を明確にしておくことが大切です。

なお、「著作者人格権を行使しない」と定めても、著作者の名誉を害するような利用まで許されるかは議論があるところです。よくいわれているのが、性的な利用を予定されていなかったような著作物(風景の写真など)をアダルトサイトに載せることなどは許されないのではないか、といわれています。不行使条項があるとしても、クリエイターを害するような利用は避けるべきですし、その範囲内でクリエイターは守られるべきと考えます。

著作権に対する理解度を確かめよう

企業の担当者やクリエイターとして、自社が著作権侵害するリスクがないか、実際にビジネス著作権検定の問題を解いて確かめてみましょう。

ビジネス著作権検定では以下のような問題が出題されます

Q
映画の著作物の著作者に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
小説が映画化されると、小説の原作者が映画の著作物の著作者になる。
映画において使用された音楽の著作者は、その映画の著作物の著作者となる。
映画会社が社外の監督に依頼して映画を製作した場合は、その映画会社がその映画の著作物の著作者となる。
映画の美術監督や撮影監督も、映画の著作物の著作者となり得る。
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サーティファイ
ビジネス著作権検定
(先ほどのクイズは「エ」が正解です)

執筆者プロフィール
神尾尊礼
東京大学法学部・法科大学院卒。2007年弁護士登録。埼玉弁護士会。現在、東京スタートアップ法律事務所所属。一般民事事件、刑事事件から家事事件、企業法務まで幅広く担当。企業法務は特に医療分野と教育分野に力を入れている。
電子パンフレット
検定の概要をまとめた
電子パンフレットを
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