「トータルエクスペリエンス」とは、企業がビジネス戦略を考えるにあたり、顧客や取引先、従業員など、これら企業を取り巻く全ての人々に『優れた体験』を提供することを目標とする考え方です。
激しい競争にさらされる現代企業は、常に対顧客、対従業員、対ツールなどの複数の課題に同時に向き合うことを求められています。多種多様な人々が、それぞれの立場や価値観に基づいて企業のサービスを評価している昨今の状況で、企業が、これらの様々な評価について取捨選択したり優先順位を付けたりして考察を行うのでななく、全ての評価を連動している立体的な構造物と捉えたうえで、同時並行的に考察を行っていこうというアプローチになります。
具体的には、これら様々な人々が行うサービスへの評価を、サービスを通して得られた『体験』として捉えなおしたうえで、これら『体験』を「CX:カスタマーエクスペリエンス」「EX:エンプロイーエクスペリエンス」「UX:ユーザーエクスペリエンス」「MX:マルチエクスペリエンス」に分類したうえで、これらの体験は個々が分離独立している存在ではなく、一体連動しているものと捉えます。全ての『体験』の質を向上させていくことを戦略の中心の一つとして考えていきます。
以下、4つの体験についてお話しいたします。
CX
カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience : CX)。
顧客が企業やブランドとの関わりを通じて得る全体的な体験や印象を指します。これには、商品やサービスの購入前、購入中、購入後のすべての接点が含まれます。
良好なカスタマーエクスペリエンスは、顧客の満足度を高め、リピート購入やブランドロイヤルティの向上につながります。
EX
エンプロイーエクスペリエンス(Employee Experience)。
従業員が働くことを通じて得る体験のことです。具体的には労働環境や職場の人間関係、待遇など、仕事に関するあらゆる事柄、経験がEXに含まれます。EXの向上により仕事へのモチベーションが上がり生産性が向上することで、より良い商品やサービスが提供できるようになり、CXの向上にもつながります
UX
ユーザーエクスペリエンス(User Experience)。
ユーザー、顧客が商品やサービスを利用する際の体験を指す言葉です。UXは商品、サービスにフォーカスした概念であり、前述したCXは、商品やサービスの購入前後に経験するすべての体験のことを指すのでUXとは意味が異なります。UXでは商品、サービスの利用を通してユーザーがどのように感じたのかを重視します。
MX
マルチエクスペリエンス(Multi-Experience)。
顧客が異なるデバイスやチャネルを通じて、シームレスで統一された体験を得ることを指します。これは、顧客がスマートフォン、タブレット、PC、ウェアラブルデバイス、音声アシスタントなど、さまざまなプラットフォーム(共通の土台となる基本的な環境や設定)を利用する中で、ブランドとのインタラクションが一貫していることを重視します。
これら4つの体験を一つのリンクしている体験の集合体と捉えることで、サービスの質を多角的に向上させていくことができます。そしてこのような過程は、サービスや企業への、真の意味でのロイヤリティーを育てていくと考えられています。
サービスや企業への信頼やロイヤリティーは、様々な人々のポジティブな体験が積み重なっていく中で、少しずつ、しかし着実に、育成されていきます。どれか一つの評価にのみ着目するのではなく、関係する様々な人々からの幅広い評価を得ることを、目標として設定する考え方となります。
【参考ページ】
セミナーズ『トータルエクスペリエンス(TX)とは?各要素とメリットや実施方法』
https://seminars.jp/media/1053
docusign『2022年のITキーワード「トータル・エクスペリエンス(TX)」って何?』
https://www.docusign.com/ja-jp/blog/what-is-total-experience