2022.6.3 Excel
大規模なビジネスの業務効率化には、システムの導入による業務改善が効果的です。一方で、小規模なビジネスでは、Excelを使って費用を抑えつつ、業務改善を図りたいという企業も多いのではないでしょうか。この記事では、Excel業務を効率化する手法と、スキル向上に役立つ最新検定をご紹介します。
Excelは手軽に表作成や関数による自動計算ができるツールですが、組織として複数人で利用するときの悩みもあります。
ここでは、Excel業務の悩みについて解説します。
Excelのファイルが増えすぎると、管理が煩雑になります。どのファイルが最新版か分からない状態では、重要なファイルを特定することも困難です。
また、ファイルが増えすぎて、社内のサーバーを圧迫することも考えられます。管理が煩雑化しやすいファイルには、以下が挙げられます。
組織の情報としてファイルを一元管理しにくいため、担当者との情報共有に手間がかかるほか、誤って古いバージョンのファイルを使用してしまうといったミスが発生しやすくなります。
複数のExcelファイルを集計する際に、手間がかかるといった問題があります。同じフォーマットのファイルを配っても、担当者によって行を挿入したり、入力欄を変えたりしている場合には、データをまとめるときに苦労します。
また、完全に同じフォーマットのファイルであれば、外部参照やVBAを使ってデータをまとめることも可能ですが、少しでも入力欄が異なると正しいデータを集計できません。
なお、VBAには専門知識が求められるため、操作に慣れていない人の場合は対応が難しくなります。簡単に変更できるExcelの特性を理解したうえで、用途に応じた使い方を工夫する必要があります。
ここからは、Excel業務を効率化するためのヒントをご紹介します。
社内で使うExcelのフォーマットは、共有サーバーの決まったフォルダにまとめて保管しましょう。名前の付け方や、バージョンの表し方を決めて、誰が見ても最新版がどれかを理解できるように管理することが重要です。
たとえば、フォーマットごとに管理者を決めて、管理者にフォーマット変更を集約すれば、ファイルの乱立を防げます。また、複数のフォーマットに分かれないような工夫も必要です。「原本1、原本2、原本3……」とファイルが分かれ、フォーマット管理が煩雑になってしまうことを防ぎます。
さらに、個人の入力項目には「アウトライン機能」を使って、表示・非表示を使い分けることも有効です。具体的には、多くの人が利用する項目だけ表示して、個人的な項目は「グループ化」して非表示にする方法があります。これによって、入力ミスや誤って消去してしまうといったトラブルを防ぐことが可能です。
アウトライン機能は、「データ(①)」タブのアウトライングループ(②)にあります。例えば、「受注一覧」のフォーマットに、特定の顧客だけが使う「注文番号」欄を追加するときに活用できます。注文番号の列を選択(③)し、グループ化(④)をクリックしてください。
アウトライン(①)が挿入されました。
アウトラインをクリックすることで、注文番号のF列(②)を隠せます。
通常はF列を隠しておき、特定の顧客データを作成するときだけF列を表示すればスムーズです。
データの集計作業は、関数やマクロを使って効率化できます。
SUMIF関数やCOUNTIF関数は、特定の条件にあう数値を合計したり、カウントしたりできる便利な関数です。毎日・毎月などのタイミングで表を加工して集計するなら、マクロに記録することで自動化できる可能性もあります。
SUMIF関数は、検索範囲から検索条件にあう値を探し、その値に対応する集計範囲の数を合計する関数です。
受注一覧から、特定の顧客の受注額合計を集計できます。
=SUMIF(検索範囲,検索条件,集計範囲)
COUNTIF関数は、検索範囲から検索条件にあう値をさがし、個数をカウントします。
受注一覧から、特定の顧客の注文回数をカウントしたい場合に利用できる関数です。
=COUNTIF(検索範囲,検索条件)
先ほどの受注一覧に、取引先ごとの合計金額と注文回数のカウントを追加すると、以下の表になります。
また、複数ファイルのデータを集計する予定であれば、他の人にフォーマットを変えさせない工夫が必要です。「シート保護機能」を使って入力欄以外の変更に制限をかけると、フォーマットを維持できます。そのほか、集計するファイルを1つのフォルダに集めて、外部参照で集計することも可能です。
シートの保護の前に、変更を許可するセルと、しないセルを区別します。 例えば、受注一覧のタイトルや見出しにはロックをかけて、受注明細にはロックをかけない場合です。
変更を許可するセル・行・列を選択(①)し、セルの書式設定で、保護タブ(②)を選びます。表示されている、ロック(③)のチェックをはずしてください。
「校閲(①)」タブの保護グループ(②)から「シートの保護(③)」を選択します。
現れたダイアログボックス(④)で、どこまでの範囲を保護するか選べます。
例では、ロックされたセルは変更不可(⑤)で、列の挿入(⑥)も許可しないため、表の項目は増やせません。
ただし、行の挿入(⑦)や削除(⑧)を許可しており、受注数が増えたときには行追加が可能です。
ここからは、作業効率を高めるExcelの便利な機能をご紹介します。
フラッシュフィルは、オートフィルの進化版にあたる機能です。オートフィルとは、数字・日付・曜日・月などの連続した規則性のあるデータであれば、続きのデータを自動入力できる機能です。
フラッシュフィルを活用すれば、文字列データの規則性をExcelが自動で分析して、続きのデータを自動入力できます。
たとえば、氏名データの横に姓と名を分けた欄を作るときに、氏名データは姓と名の間に空白を入れて、区別できるようにしておきます。その後、1番上の行だけ手入力してフラッシュフィルを使うと、空白前後で文字列を分けることを認識して、自動で残りのデータが入力されます。
なお、フラッシュフィルのショートカットは「Ctrl+E」です。
表を作成した後に「行と列を逆にしておけばよかった」と思ったときでも、作り直す必要はありません。Excelには、表の行・列を簡単に入れ替える機能があります。
まずは、入れ替えたい表の全体を選択してコピーします。一旦別の場所に貼り付ける必要があるため、空いたセルを選択してください。その後、貼り付けメニューから「形式を選択して貼り付け」を選んでポップアップウィンドウを開きます。
右下の「行/列の入れ替え」をチェックして「OK」を押せば、行と列が入れ替わった表が貼り付けされます。
▶ 詳しくは、別記事「データの行・列(縦・横)を入れ替える」もご参照ください。
「上書き保存」や「名前を付けて保存」など、使用頻度が高い機能は、ショートカットを覚えておくと便利です。よく使う機能にショートカットが割り当てられていないかをチェックしてみましょう。
Ctrl+S | ファイルを上書き保存 |
F12 | 名前を付けて保存 |
Ctrl+F | 検索 |
Ctrl+H | 置換 |
Ctrl+1 | セルの書式設定を開く |
F4 | 直前の操作を繰り返す |
なかでも「F4」で直前の操作を繰り返すショートカットは、使い勝手のよい機能です。行の挿入や、文字の色変更などに使えます。別のセルで同じ操作を繰り返すときは、右手でセルを選択、左手で「F4」を押すと時短になります。
Excelを日々の業務で使用しているだけでは、「新しい機能を知る機会がない」という方も少なくありません。
ご自身のExcelスキルを測るため、またスキルアップを目指すために、Excelに関する資格や検定を受けてみることも一つです。
ここからは、Excelに関する資格の種類と合格の難易度について紹介します。
「Excel®ビジネススキル検定」は、2021年11月に始まった新しいExcel検定です。実践的なスキル向上を目指すのに最適な検定になっており、より速く正確なアウトプットが求められるビジネスシーンにおいて実力を測ることが可能です。
問題は、ビジネスシーンを想定した先輩・上司からの課題付与型。与えられたミッションに対し、Excelを駆使した結果を導きます。結果を出すまでの過程は問わないので、自由な発想で解答が可能です。また、正答までの所要時間が配点に組み込まれており、「速く正確に解けるほど点数が高くなる」ことも特徴です。
認定基準はエキスパートとスタンダードの2種類で、エキスパートの方が難易度は高く設定されています。現時点では個人の受験はできず、企業やスクールなど、団体・組織からの申し込みを受け付けています。
▶ Excelビジネススキル検定を詳しく見る
「Excel®表計算処理技能認定試験」は、Excelの実用的なスキルを測る認定試験です。
Excelに関する知識だけでなく、データ集計から関数、グラフ作成などを実技形式で作成する問題形式で、素の素材データから、1つの成果物を作成するスキルが身につきます。2級・1級は知識問題があるのも特徴的です。
1〜3級までの分類がありますが、どの級も合格率が80%程度となっており、しっかりと試験対策をしておくことで、合格を目指せます。Excelスキルを幅広く学べるうえ、スキルレベルの証明にもなる試験のため、転職やキャリアアップにも有利です。
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