「現代のビジネスシーンにおいては、著作権の知識は不可欠である」という命題に異論を唱える方はいないでしょうか。ただし、これまではその意味を「うっかり他人の著作権を侵害しないために著作権の知識を身につけるべき」との、どちらかというと「防御」の観点で説明されてきた印象を受けます。
しかし、著作権は守りのツールではありません。より積極的に攻めのツールとして活用すべきものなのです。魅力ある著作権物(コンテンツ)は時を超え、国境を越えて愛され続けます。そのコンテンツから利益を生み出し、剽窃から守る源こそ著作権なのです。著作権を正しく理解し、適切な契約を関係者と結び、デジタルコンテンツならば適切なDRM(著作権管理技術)を選択して流通させることが重要です。
一方で、著作権は著作物を生み出さない立場であっても重要な知識です。例えば、各種イベントのために外部のデザイナーが創作した「キャラクター」を利用しようとした場合に、利用方法を踏まえた契約を締結することが担当者には求めされていますし、契約の範囲を超えた利用をしていないかを判断できなければなりません。また、昨今盛んになっている「地域のブランド化」を支える「地域コンテンツ」も、その土台は著作権が中心となります。
平成20年4月から著作権検定委員会の委員長を拝命しております久保田です。私は、ビジネス著作権検定がスタートした平成16年から委員として当試験の創設に関わっており、これまでも、セミナーやパンフレットを通じて受験者の皆さまや著作権に興味のある方々に検定の趣旨や狙いを説明してきましたが、このたび、「コラム」という形でメッセージをお伝えする場をいただきました。
今後はこの場を通じて、さらに法改正や著作権侵害事件、著作権ビジネスに関わる話題、その他検定試験についての分析、評価等について論述していこうと思います。
初回は、私が専務理事・事務局長を務めている社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)と著作権知識の大切さについて触れたいと思います。
ACCSは、1985年に前身の組織「ソフトウェア法的保護監視機構」として設立され、その後、文化の発展に寄与することを目的として活動を行い、現在は235社が会員となっています。スタート当初は、ビジネスやゲームのソフトウェアメーカーが主な会員でしたが、現在は、アニメ制作会社などのコンテンツメーカーや出版社なども多く参画しており、著作権侵害対策を主な業務として、会員企業の行う刑事告訴への支援なども行っています。このことから、強面な団体と見ている人もいるかもしれませんが、決してそうではありません。
確かにACCSは、毎年、約30件の刑事事件に協力しています。しかし、元来、著作権が守られる社会を実現するためには、「侵害対策」と並び、「保護技術」、「啓発教育」の三点のバランスが適切でなくてはなりませんし、その中でも何より重要なのが「教育」であると考えています。
教育で得る著作権の知識は、他人の著作権を侵害しないためだけのものではなく、たとえばプロのクリエイターとして創作活動を行う者にとっては、自分の著作物を守るため、さらに、著作物をより利用してもらうためにも著作権の知識は欠かせません。
また、現在の情報社会においては、どのようなビジネスを行うにしても、自ら情報発信を行う機会や著作物を扱う機会が飛躍的に増えたため、著作権の知識は必要不可欠です。
このような観点から、ビジネス著作権検定を推進することは、著作権を保護、活用し、著作権ビジネスを推進するACCSの目的にも合致すると考え、委員長職をお引き受けしています。
ビジネス著作権検定を通じて、クリエイティブな活動や著作権ビジネスを支える環境づくりに貢献したいと考えていますので、ぜひ、この検定にチャレンジして、現代のビジネスに不可欠な著作権の知識を身に付けていただきたいと思います。
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