「現代のビジネスシーンにおいては、著作権の知識は不可欠である」という命題に異論を唱える方はいないでしょうか。ただし、これまではその意味を「うっかり他人の著作権を侵害しないために著作権の知識を身につけるべき」との、どちらかというと「防御」の観点で説明されてきた印象を受けます。
しかし、著作権は守りのツールではありません。より積極的に攻めのツールとして活用すべきものなのです。魅力ある著作権物(コンテンツ)は時を超え、国境を越えて愛され続けます。そのコンテンツから利益を生み出し、剽窃から守る源こそ著作権なのです。著作権を正しく理解し、適切な契約を関係者と結び、デジタルコンテンツならば適切なDRM(著作権管理技術)を選択して流通させることが重要です。
一方で、著作権は著作物を生み出さない立場であっても重要な知識です。例えば、各種イベントのために外部のデザイナーが創作した「キャラクター」を利用しようとした場合に、利用方法を踏まえた契約を締結することが担当者には求めされていますし、契約の範囲を超えた利用をしていないかを判断できなければなりません。また、昨今盛んになっている「地域のブランド化」を支える「地域コンテンツ」も、その土台は著作権が中心となります。
7月末にベトナムに行ってきました。WIPO(世界知的所有権機関)のシンポジウムが開催され、アジアの国々から著作権行政に携わる政府関係者がハノイに集まって、3日間、著作権に関する議論を行いました。国際的なシンポジウムだけあって、例えばブータンの代表者は鮮やかな民族衣装を着ているなど、地域の文化性を強く感じました。私は、スピーチをしたのですが、そうした地域性を念頭に置いて、文化保護の観点から著作権制度について話をしました。
さて、著作権制度といえば、日本では、6月の国会で著作権法の改正案が可決され、来年1月1日から施行されることになりました。俗に言われる「ダウンロード違法化」が今回の改正のポイントです。
日本の著作権法では、権利者の許諾なく著作物を利用することはできないことが原則ですが、例外的にその権利を制限し、著作物を許諾なく利用できる規定(権利制限規定)を設けています。その一つが第30条の私的使用目的の複製です。「個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する」場合には権利者の許諾なく著作物を複製することができます。自分で楽しむために、テレビ番組を家庭内でDVDなどに録画することなどは許諾をとる必要はありません。
同様に、インターネット上で違法にアップロードされた著作物であっても、これをダウンロードして入手(複製)する行為も私的使用目的であれば適法とされてきました。しかし、著作物を入手する人がいるからこそ、権利者の許諾なくアップロードする人がいることから考えると、違法なものだと知りつつ入手しても全く違法とはならないのは変な話です。
そこで、今回の改正において、権利者の許諾なくアップロードされた著作物を違法であると知りながらダウンロードして録音・録画する行為を「私的使用目的の複製」の範囲から外すことになりました。つまり、権利者の許諾なくアップロードされた音楽や映像のダウンロードは、それと知っていれば違法になるのです。この改正は、直接ユーザーにも関わるものです。刑事罰は規定されていませんが、違法行為には変わりありません。
このように情報化社会において、著作権法はとても重要な法律であり、クリエイター、アーティスト、メディア関連のプロだけでなく、一般ユーザーにとっても知らなくてはならないものになりました。インターネット時代になり、法を知らないことによって、自分でも気づかないうちに不正を働いてしまう危険性が増えているからです。
そこで、ぜひ、著作権法について勉強して、ビジネス著作権検定を受検して欲しいと思います。この試験は著作権についての身近な事例から仕事で必要な知識までを問う有意義なものです。公式のテキストもありますので、学習してぜひ受けてみてください。次の試験は、11月です。
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
© Certify Inc. All Rights Reserved.