「現代のビジネスシーンにおいては、著作権の知識は不可欠である」という命題に異論を唱える方はいないでしょうか。ただし、これまではその意味を「うっかり他人の著作権を侵害しないために著作権の知識を身につけるべき」との、どちらかというと「防御」の観点で説明されてきた印象を受けます。
しかし、著作権は守りのツールではありません。より積極的に攻めのツールとして活用すべきものなのです。魅力ある著作権物(コンテンツ)は時を超え、国境を越えて愛され続けます。そのコンテンツから利益を生み出し、剽窃から守る源こそ著作権なのです。著作権を正しく理解し、適切な契約を関係者と結び、デジタルコンテンツならば適切なDRM(著作権管理技術)を選択して流通させることが重要です。
一方で、著作権は著作物を生み出さない立場であっても重要な知識です。例えば、各種イベントのために外部のデザイナーが創作した「キャラクター」を利用しようとした場合に、利用方法を踏まえた契約を締結することが担当者には求めされていますし、契約の範囲を超えた利用をしていないかを判断できなければなりません。また、昨今盛んになっている「地域のブランド化」を支える「地域コンテンツ」も、その土台は著作権が中心となります。
改正された著作権法が10月から施行されました。著作権に関心を持っていれば新聞や雑誌などで盛んに取り上げられたからご存じでしょう。注目されたのは、いわゆる「違法ダウンロード罰則化」です。
無許諾にアップロードされた著作物を違法であると知りながらダウンロードして録音・録画する行為を、第30条の「私的使用目的の複製」の範囲から外し、違法となったのが2010年1月施行の改正です。このときの改正では罰則がなく、今回10月から施行された改正で、有償著作物(有償で販売・配信されている著作物)について、有償著作物であること、それが違法にアップロードされているとしりながらダウンロードして録音・録画する行為に罰則(2年以下の懲役または200万円以下の罰金またはこれらの併科)が付けられました。
複製権侵害のほかに、インターネットの普及とともに蔓延したのが、公衆送信権侵害に当たる事案です。海賊版をWebサイトにアップロードしてダウンロードできるようにした事案が見られるようになったのが2000年頃。動画投稿サイトへの違法アップロードも問題になっています。さらに、今日に至るまで問題になっているのが、ファイル共有ソフトを使った違法アップロードです。
著作権検定を受検する以上、条文に当たって、その内容に習熟しておく必要があります。ただ、ユーザーとして著作権法を見るときに、罰則があるからダメになった、という発想をして欲しくはありません。無許諾にアップロードされた著作物を違法であると知りながらダウンロードして録音・録画する行為は、9月以前であっても違法だったし、民事賠償の対象だったのです。違法でも刑事罰がなければ、やっても構わないという考え方は、法律を勉強する人であれば絶対にして欲しくないのです。
一方、CDやDVDにコピーされた海賊版を業者が販売する形態は1990年代前半に撲滅されたと思われていましたが、2000年代以降、大都市の繁華街や電気街などでゲリラ的に販売されている場合があります。こうした販売形態は組織的に行われ、暴力団が関係している場合もあるようです。
いずれにしても、「違法ダウンロード罰則化」は施行されました。新しいトピックでもあるので、この機会に勉強しておいてください。今回、6月に公布された改正法は、「違法ダウンロード罰則化」を含め、大きく5点あります。それぞれの要旨と、Q&Aが文化庁のサイト( http://www.bunka.go.jp/chosakuken/24_houkaisei.html )に掲載されているので参考にしてください。
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