「現代のビジネスシーンにおいては、著作権の知識は不可欠である」という命題に異論を唱える方はいないでしょうか。ただし、これまではその意味を「うっかり他人の著作権を侵害しないために著作権の知識を身につけるべき」との、どちらかというと「防御」の観点で説明されてきた印象を受けます。
しかし、著作権は守りのツールではありません。より積極的に攻めのツールとして活用すべきものなのです。魅力ある著作権物(コンテンツ)は時を超え、国境を越えて愛され続けます。そのコンテンツから利益を生み出し、剽窃から守る源こそ著作権なのです。著作権を正しく理解し、適切な契約を関係者と結び、デジタルコンテンツならば適切なDRM(著作権管理技術)を選択して流通させることが重要です。
一方で、著作権は著作物を生み出さない立場であっても重要な知識です。例えば、各種イベントのために外部のデザイナーが創作した「キャラクター」を利用しようとした場合に、利用方法を踏まえた契約を締結することが担当者には求めされていますし、契約の範囲を超えた利用をしていないかを判断できなければなりません。また、昨今盛んになっている「地域のブランド化」を支える「地域コンテンツ」も、その土台は著作権が中心となります。
視覚障がい者等のための著作物の利用について定めた第37条では、元々、点字翻訳と、音声での録音だけが規定されていました。
その後、コンピュータの発展に伴い、点字や音声だけでなく、さまざまな形式への変換が可能になりました。条文では、「当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式」とされています。
具体的には、関係団体が作成したガイドラインによると、録音、拡大文字、テキストデータ、マルチメディアデイジー、布の絵本、触図・触地図、ピクトグラムなどが例示されています。
このうち、デイジー(DAISY=Disital Accessible Information System)というのは、テキストや音声をHTMLなど標準技術で制御する国際標準規格です。最新版の規格で作成された交換フォーマットは、電子出版の標準規格EPUB3形式のファイルを作成することができるなど互換性が進んでおり、私は、ICTを活用して情報アクセスを容易にするデイジーに大いに期待しています。
第37条は、制限規定の中でも普段あまり気にしていない条文かも知れませんが、前々回に紹介したように、全国に146万人いると言われる「視覚の障害によって生活に何らかの支障のある人」の福祉増進のための重要な規定です。ぜひ勉強しておいて欲しいと考えています。
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