「現代のビジネスシーンにおいては、著作権の知識は不可欠である」という命題に異論を唱える方はいないでしょうか。ただし、これまではその意味を「うっかり他人の著作権を侵害しないために著作権の知識を身につけるべき」との、どちらかというと「防御」の観点で説明されてきた印象を受けます。
しかし、著作権は守りのツールではありません。より積極的に攻めのツールとして活用すべきものなのです。魅力ある著作権物(コンテンツ)は時を超え、国境を越えて愛され続けます。そのコンテンツから利益を生み出し、剽窃から守る源こそ著作権なのです。著作権を正しく理解し、適切な契約を関係者と結び、デジタルコンテンツならば適切なDRM(著作権管理技術)を選択して流通させることが重要です。
一方で、著作権は著作物を生み出さない立場であっても重要な知識です。例えば、各種イベントのために外部のデザイナーが創作した「キャラクター」を利用しようとした場合に、利用方法を踏まえた契約を締結することが担当者には求めされていますし、契約の範囲を超えた利用をしていないかを判断できなければなりません。また、昨今盛んになっている「地域のブランド化」を支える「地域コンテンツ」も、その土台は著作権が中心となります。
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉のニュースの中では、知的財産権についても話し合われていると報道されています。この内容について、皆さんはご存じですか?
報道によると、米国が日本に要求している項目として、(1)著作権保護期間を現在の50年から70年に延長すること、(2)著作権侵害の刑事罰を非親告罪化すること、(3)法定賠償制度の導入などといわれています。法廷賠償とは、著作権侵害で損害を被った額を証明しなくても、ペナルティとしての賠償額を裁判所が決定できるという制度のことです。
このうち、(2)の非親告罪化について、皆さんはどう考えますか?まず、現在の著作権法は親告罪であることは、ご存じですね。親告罪とは、刑事裁判を行うために、著作権者の告訴が必要という制度です。非親告罪化とは、つまり、著作権者の告訴がなくても、捜査機関が起訴できるようにしようということです。
もし、非親告罪化されたら、どうなるでしょう。海賊版の販売の中には、大規模な業務として行っているような業者もいます。こうした業者に対しては、著作権者が告訴を待たずに迅速に刑事摘発を行える可能性があるという考えもあるでしょう。
しかし、著作権者でなければ、著作物の利用に許諾を与えたかどうか分からないのが現実で、非親告罪化されても捜査の段階でも刑事裁判での段階のいずれも著作権者の協力が必須で、刑事摘発を捜査機関のみでは行いえません。と、なると、非親告罪化することでの効果はそれほど期待できないと考えられます。
これらはあくまでも報道によるものなので、実際どのような内容が盛り込まれるのかはわかりません。いずれにしても、TPP交渉の動向は今後の著作権法の動向に影響がありそうです。皆さんも交渉の経緯を注意してみて下さい。
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