「現代のビジネスシーンにおいては、著作権の知識は不可欠である」という命題に異論を唱える方はいないでしょうか。ただし、これまではその意味を「うっかり他人の著作権を侵害しないために著作権の知識を身につけるべき」との、どちらかというと「防御」の観点で説明されてきた印象を受けます。
しかし、著作権は守りのツールではありません。より積極的に攻めのツールとして活用すべきものなのです。魅力ある著作権物(コンテンツ)は時を超え、国境を越えて愛され続けます。そのコンテンツから利益を生み出し、剽窃から守る源こそ著作権なのです。著作権を正しく理解し、適切な契約を関係者と結び、デジタルコンテンツならば適切なDRM(著作権管理技術)を選択して流通させることが重要です。
一方で、著作権は著作物を生み出さない立場であっても重要な知識です。例えば、各種イベントのために外部のデザイナーが創作した「キャラクター」を利用しようとした場合に、利用方法を踏まえた契約を締結することが担当者には求めされていますし、契約の範囲を超えた利用をしていないかを判断できなければなりません。また、昨今盛んになっている「地域のブランド化」を支える「地域コンテンツ」も、その土台は著作権が中心となります。
大学生の就職活動の際、企業に提出するエントリーシートで「コピペ」(コピー&ペースト)が蔓延しているそうです。就職活動をしていた長男から聞いたことなのですが、確かにインターネットで検索すると、業種ごとの「志望動機」例文集が見つかります。何十社にも提出するものだからコピペは仕方ない、と言う人もいるようですが、自分の言葉で書かない志望動機に意味があるのでしょうか。
大学でもコピペは大きな問題だと以前から聞いています。酷い例では、レポートを書くとき、テーマに合った既存の論文などからコピペしただけで繋ぎ合わせる場合もあるそうです。
エントリーシートに描かれた志望動機、既存の論文の文章は言語の著作物として保護されており、著作者の許諾なくコピペ(複製)することはできません。では、すべての「コピペ」が著作権侵害となってしまうかというと、実際には「コピペOK」としてインターネット上に公表されている文章もあるため、そうとは単純には言えません。
そもそも、レポートを作成するとき、自分の論理を補強するためなどで他人の文章を引き合いに出す場合は当然あるでしょう。そこで、その場合には著作権者の許諾を得るか、著作権法で定められた「引用」を行うことになります。
ただし「引用」の要件は条文だけからは判然とせず、過去の裁判例等からみると次の要件を満たすことが必要だと考えられます。(1)引用される著作物が公表されていること、(2)引用部分と自分の著作物が明瞭に区別されていること、(3)自分の著作物が主で引用された著作物が従の関係であること、(4)引用する必要性・必然性があること、(5)原則として出所を明示すること。
ビジネス著作権検定を受検する方は、この要件については理解していることでしょう。もし、知識があやふやになっているようなら、改めて確認してみてください。
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