「現代のビジネスシーンにおいては、著作権の知識は不可欠である」という命題に異論を唱える方はいないでしょうか。ただし、これまではその意味を「うっかり他人の著作権を侵害しないために著作権の知識を身につけるべき」との、どちらかというと「防御」の観点で説明されてきた印象を受けます。
しかし、著作権は守りのツールではありません。より積極的に攻めのツールとして活用すべきものなのです。魅力ある著作権物(コンテンツ)は時を超え、国境を越えて愛され続けます。そのコンテンツから利益を生み出し、剽窃から守る源こそ著作権なのです。著作権を正しく理解し、適切な契約を関係者と結び、デジタルコンテンツならば適切なDRM(著作権管理技術)を選択して流通させることが重要です。
一方で、著作権は著作物を生み出さない立場であっても重要な知識です。例えば、各種イベントのために外部のデザイナーが創作した「キャラクター」を利用しようとした場合に、利用方法を踏まえた契約を締結することが担当者には求めされていますし、契約の範囲を超えた利用をしていないかを判断できなければなりません。また、昨今盛んになっている「地域のブランド化」を支える「地域コンテンツ」も、その土台は著作権が中心となります。
2011年9月、九州のある地方自治体が、写真撮影事務所を経営する男性の撮影した風景写真を、契約した年以外にも2010年まで継続してパンフレットなどに男性に無断で掲載(複製)していたことが、著作権の侵害にあたるとして、そのことを認め、男性に500万円を支払って和解するとの報道がありました。
一般的に、写真は著作権法の保護対象(著作物)であり、撮影者が著作者となります。
著作物を外注する場合、注意しなければならないのは、この訴訟でも問題になった契約における著作権の帰属についてです。この訴訟のように、企業などがパンフレットに使用する写真をカメラマンに外注して撮影してもらい、そのことに対して報酬を支払ったとしても、契約書に著作権の帰属について特段の条項がなければ、著作権は著作者であるカメラマンが持つことになりますので、企業などはその写真を勝手に使うことはできません。
このように、他者が著作権を有する著作物を利用するためには、著作者との間で著作権について、著作物の利用の許諾を得るか、著作権の譲渡を受けるかを契約などで定めておく必要があります。
利用の許諾を得る場合、どの著作物について、どのように利用するか、どの期間利用するか等について契約上明確にしておきます。上記の例では契約で定めた期間を超えて町が著作物を利用してしまったため、著作権侵害となってしまいました。
また、著作権の譲渡を受ける場合には、下記の2点に注意が必要です。
①契約書には、「全ての著作権は○○社に移転する」と書くだけでは不十分で、「著作権法第27条、28条を含む、全ての著作権は○○社に移転する」と27条および28条については特掲する必要があります。
②著作権の譲渡ができるのは狭義の著作権(著作財産権)に限られるため、著作者が有する著作者人格権については、契約書に、「(受託者)は、(委託者)に対して、著作者人格権を行使しない」といった意味の不行使条項を加えておく必要があります。
なお、これは全ての著作権の譲渡を受ける場合で、著作権は一部の権利(例えば複製権)のみの譲渡も可能です。
さらに、写真の利用の場合には被写体についても留意する必要があります。被写体が人物である場合には肖像権などに気をつけなければなりませんし、著作物である場合にはカメラマンの著作権に加えて、被写体の著作権については許諾を得る必要があります。
次回は引き続き、今回のテーマについてより詳しく説明いたします。
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