「現代のビジネスシーンにおいては、著作権の知識は不可欠である」という命題に異論を唱える方はいないでしょうか。ただし、これまではその意味を「うっかり他人の著作権を侵害しないために著作権の知識を身につけるべき」との、どちらかというと「防御」の観点で説明されてきた印象を受けます。
しかし、著作権は守りのツールではありません。より積極的に攻めのツールとして活用すべきものなのです。魅力ある著作権物(コンテンツ)は時を超え、国境を越えて愛され続けます。そのコンテンツから利益を生み出し、剽窃から守る源こそ著作権なのです。著作権を正しく理解し、適切な契約を関係者と結び、デジタルコンテンツならば適切なDRM(著作権管理技術)を選択して流通させることが重要です。
一方で、著作権は著作物を生み出さない立場であっても重要な知識です。例えば、各種イベントのために外部のデザイナーが創作した「キャラクター」を利用しようとした場合に、利用方法を踏まえた契約を締結することが担当者には求めされていますし、契約の範囲を超えた利用をしていないかを判断できなければなりません。また、昨今盛んになっている「地域のブランド化」を支える「地域コンテンツ」も、その土台は著作権が中心となります。
前回、大学の論文や就職活動のエントリーシートでコピペが蔓延していることについて書きました。いわゆるコピペの問題は、著作権侵害か否かという問題と、大学のレポートとして、すべてコピペで済ませたものに対し、単位を認定すべきかという問題の2点に分けて考えることができます。
まず、著作権侵害の問題については前回解説したとおりですが、他人の文章や図、写真などの著作物を自己のレポートに利用したい場合には、「許諾を得て組み込む」か「引用」をすればよいことになります。
問題は、他人の文章等をこれらの方法を行なわず、自分の文章として組み込んでしまうと著作権侵害の可能性が起こります。
ただし、教育機関における授業に伴う複製は、著作権法35条で著作権者の許諾なく行うことができるため、ケースによっては無許諾で行える場合もありますが、試験に代わるレポートの場合は35条の「授業の過程における使用」という要件を満たさない可能性もあるため、全ての場合に35条が適用されるとはいえません。
この問題については、大学も対策を行っているとも聞いています。例えば、滋賀大学にはACCSの職員が出向き、「著作権と論文の書き方」について先生方や学生を対象にした説明を行いました。また、立命館大学では法学部の学生を対象とした論文の書き方を小冊子化し、コピペ厳禁をルール化しているとのことです。
一方、最近では、インターネットにある情報と照らし合わせてコピペを判定するソフトも開発・販売されており、ACCSはそのソフト開発会社とも情報交換を行っています。こうしたツールを利用している大学も増えているようです。
後者の問題ですが、そもそも、コピペだけで論文をでっち上げては何のために勉強しているのか分かりません。また、コピペしたエントリーシートでは自分のことを何も語っていないのと同じです。コピペは機能としては便利ですが、それだけに頼っては何も表現できていないと言わざるを得ません。拙くても構わないので、自分の意見や考えについては自分の言葉で「出力」すなわち書くことが学習にとって最も大切なのです。学生さんには悩みつつ表現する努力を繰り返して欲しいと思います。
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