「現代のビジネスシーンにおいては、著作権の知識は不可欠である」という命題に異論を唱える方はいないでしょうか。ただし、これまではその意味を「うっかり他人の著作権を侵害しないために著作権の知識を身につけるべき」との、どちらかというと「防御」の観点で説明されてきた印象を受けます。
しかし、著作権は守りのツールではありません。より積極的に攻めのツールとして活用すべきものなのです。魅力ある著作権物(コンテンツ)は時を超え、国境を越えて愛され続けます。そのコンテンツから利益を生み出し、剽窃から守る源こそ著作権なのです。著作権を正しく理解し、適切な契約を関係者と結び、デジタルコンテンツならば適切なDRM(著作権管理技術)を選択して流通させることが重要です。
一方で、著作権は著作物を生み出さない立場であっても重要な知識です。例えば、各種イベントのために外部のデザイナーが創作した「キャラクター」を利用しようとした場合に、利用方法を踏まえた契約を締結することが担当者には求めされていますし、契約の範囲を超えた利用をしていないかを判断できなければなりません。また、昨今盛んになっている「地域のブランド化」を支える「地域コンテンツ」も、その土台は著作権が中心となります。
私が専務理事を務める社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は、政府の公益法人改革によって4月1日付で正式名称が変わり、一般社団法人となりました。これにあわせて内部体制などの改革も行ったのですが、業務内容に変わりはありません。この機会に改めてACCSの仕事について説明します。
ACCSは著作権が正しく守られる社会の実現のため、普及・啓発を行っている団体ですが、会員企業が著作権侵害の被害を受けた場合に、刑事手続きへの支援や協力を行い、同種の侵害を抑止するため、事案の内容についてマスメディアやホームページを通じて広く提供しています。この3月までの1年間で刑事摘発された事件は、ACCSが発表した件数で48件。昨年12月には警察庁による全国47都道府県で一斉取締りも行われており、ACCSが支援した著作権侵害事案について摘発または送検された人数は60人を超えています。
個々の事件の詳しい内容は、ACCSのWebサイトの著作権侵害事件ページ(http://www2.accsjp.or.jp/criminal/)を見てください。最近の事案で目立つのは、ファイル共有ソフト「Share」を通じてアニメや漫画、ゲームソフトをアップロード、さらに、オークションを通じてアニメやCADソフト、カーナビソフトの海賊版の販売といったものです。
もっと詳しく見ていくと、「海賊版ビジネスソフトの業務使用」や、「電子書籍の無断ダウンロード販売」という事件もあります。特定のジャンルに限らず、デジタル化された著作物は今や何でも著作権侵害の対象になっています。
摘発される人も、学生や会社員、企業経営者に公務員などさまざまです。かつて、著作権侵害で摘発されたのは、それを生業とする業者だったり暴力団関係者だったりしたものですが、今では気軽にコピーやアップロードができるためか、「プロ」ではない一般の人が摘発される事件が頻発しているのです。
ACCSが誕生したのは27年前の1985年。今の状況に至るまでは、事件の性質など、さまざまな変遷がありました。次回は、少し歴史的なことを書こうと思います。著作権法の支分権がなぜ今のようなものになったか、理解する助けになるかも知れません。
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