「現代のビジネスシーンにおいては、著作権の知識は不可欠である」という命題に異論を唱える方はいないでしょうか。ただし、これまではその意味を「うっかり他人の著作権を侵害しないために著作権の知識を身につけるべき」との、どちらかというと「防御」の観点で説明されてきた印象を受けます。
しかし、著作権は守りのツールではありません。より積極的に攻めのツールとして活用すべきものなのです。魅力ある著作権物(コンテンツ)は時を超え、国境を越えて愛され続けます。そのコンテンツから利益を生み出し、剽窃から守る源こそ著作権なのです。著作権を正しく理解し、適切な契約を関係者と結び、デジタルコンテンツならば適切なDRM(著作権管理技術)を選択して流通させることが重要です。
一方で、著作権は著作物を生み出さない立場であっても重要な知識です。例えば、各種イベントのために外部のデザイナーが創作した「キャラクター」を利用しようとした場合に、利用方法を踏まえた契約を締結することが担当者には求めされていますし、契約の範囲を超えた利用をしていないかを判断できなければなりません。また、昨今盛んになっている「地域のブランド化」を支える「地域コンテンツ」も、その土台は著作権が中心となります。
電車の中や街で新入社員たちを見かける季節になりました。会社の中では、著作権について、業務で使用するために個人で遵守する以上の注意が求められます。そこで、今回から何回かに分けて、会社の中でやってしまいがちな違法コピーと、その対策について説明しましょう。まず、パソコンソフトを使う場合について考えます。
会社では、業務上、ワープロソフトや表計算ソフトといったパソコンソフトを使う場合が多くあります。たいていは会社から支給されたパソコンの中にあらかじめインストールされているでしょう。しかし、業務を進める上で、会社のパソコンの中にないソフトを使いたい場合があるかも知れません。そのとき、例えば、自宅で使っているソフトを持ってきて会社のパソコンにインストールすることは許されるでしょうか。
考えなければならない点は3つあります。一つは著作権。次にソフトのライセンス(使用許諾)。最後に会社の規則です。
まず、パソコンソフトは「プログラムの著作物」として著作権法で保護されています。パソコンソフトのインストールは複製(著作権法21条)にあたるため、著作権者であるソフトメーカーの許諾を得る必要があります。一般的なビジネスソフトはライセンス契約の締結を通じて許諾を得ますので、ソフトの使用条件についてはライセンス契約の内容を確認します。
なお、ライセンス契約は、ソフトによって異なるので個々に確認が必要です。中には、同時に使用しないという条件の下で、2台のパソコンにインストールすることを認めるものもあります。
ソフトのライセンスで認められていたとしても、会社の規則で私物のソフトのインストールを禁止している場合も多いので注意が必要です。会社のパソコンに社員が勝手にソフトをインストールするようになると、管理が難しくなり不正コピーのリスクが高まります。海賊版(不正コピーされたソフト)や私物のパソコンに加えて会社のパソコンにインストールして使用することがライセンス契約で許されていないソフトがインストールされれば、違法コピーで企業が刑事罰や民事責任を問われるなど、深刻な問題となりかねません。さらにウィルス感染などの危険性もあります。
会社のパソコンにソフトをインストールする場合は、このような観点が必要です。どうしても業務で使いたいソフトがある場合は、自宅から持ってくるなどして勝手にインストールするのではなく、上司や社内のソフトウェア管理者に確認して、許可を得てから行ってください。
私の所属するコンピュータソフトウェア著作権協会では、「新人」と「先輩」の会話を通じて、著作権の概要やビジネスシーンで侵しがちな著作権侵害の実例を会話形式で分かりやすく紹介した小冊子『ビジネスマン必携!知って得する著作権』を無料配布しています。PDF版( http://www2.accsjp.or.jp/books/pdf/business.pdf )もありますので、参考にしてください。
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